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記録・考察

​2年目のオンデマンド講義:「WITHコロナ」で変えたこと・変えなかったこと

遠矢浩規(2022年2月11日記)

はじめに

2021年度秋学期、「コロナ下」で2年目となる「オンデマンド講義」を実施しました。「コロナ下」という点は今年度も昨年度と一見同じでしたが、この1年で、オンライン授業をめぐる「環境」と「意識」は大きく変わったように思います。

第一に、(少なくとも勤務校では)2021年度は「ステイホーム」でなくなりました。オンデマンド講義は学生にとって、サークルやバイトとの兼ね合いで、「好きな時に好きな場所で視聴するもの」になりました。第二に、オンライン授業は「対面」と同等のデフォルトになりました。「対面かオンラインか」ではなく、「満足度できるオンラインか否か」が学生の大きな関心事になりました。

以下では、そのような環境と意識の変化を視野に入れて取り組んだ、2021年度のオンデマンド講義「国際政治経済学」の取り組みを紹介します。とりとめのない長文・駄文ですが、オンデマンド講義をデザインする際のヒントになることが少しでもあれば幸いです。

※昨年度のオンデマンド講義の取り組みについての考察が本サイトのこちらにあります。また、同取り組みを動画で紹介したものが、こちら(本人制作)とこちら(勤務校制作)にあります。あわせてご参照ください。これらの内容の一部は以下の考察でも繰り返されています。
 

(以下の内容)

・どのようなオンデマンド講義だったか

​・初回動画は非常に大事

・制作のポリシー

・長い動画は作らない(再考)

・動きのある動画にする(再考)

・遊びの要素を入れる(再考)

・指導教員がいると感じさせる

・学生からの評価

​・最後に

どのようなオンデマンド講義だったか

​まず、配信したオンデマンド講義が実際にどのようなものだったかを紹介します。講義の核となった「動画」は次の3種類す。

(1) ガイダンス: その週の本編動画の位置づけ、他の本編動画との関連、文献紹介、補足説明、余談など。

(2) 本編: 国際政治経済学の理論や概念を説明。原則として、一つの動画で一つのテーマ。

(3) 質問・コメント紹介: 履修者からの質問、コメントを紹介しリプライしたもの。

言葉で説明するより実物を見てもらう方が早いので、サンプル(典型的な1セット)を挙げます。サンプル動画①が「ガイダンス」、同②・③が「本編」、同④が「質問・コメント紹介」です。 ※下掲サンプル以外の動画を本サイトのこちらで視聴できます。

サンプル動画①「#30: 第11週ガイダンス」12分

​サンプル動画②「#31: モデルスキーの覇権循環論」(本編) 25分

​サンプル動画③「#32: 構造的権力」(本編) 24分

​サンプル動画④「#33: お便りコーナー」(質問・コメント紹介) 16分

このように、「ガイダンス」と「質問・コメント紹介」は、教員本人の「顔出し」または「3Dアニメキャラ」(またはその両方)で進行し、「本編」はすべ「入力文字読み上げソフトによる音声」+「フル・アニメーション」というスタイルにしました(したがって、本編に本人の顔や声は登場しません)。動画1本の時間は15~25分程度です。このような動画を全15週の講義で、計42本制作・配信しました。

​「ガイダンス」と「本編」は、もともとは対面授業で90分で話していた内容を導入部分と複数の小テーマに分割したものです。

「オンデマンド講義=動画」というイメージが一般的には強いと思いますが、本講義では、「動画」は講義というパッケージの一部という位置づけです。毎週の講義パッケージは、下記のコンテンツを含むようにデザインしました。

--- 「動画

 ・最後まで見ないと視聴履歴が残らないように設定。

 ・視聴履歴は「出席」として自動で得点化。

--- 「オンライン上で回答する『小テスト』

 ・動画を視聴完了しないと問題の閲覧と回答を提出をできないように設定。回答期限あり(1週間)。

 ・すべてMoodleで自動採点され、テスト結果と正答は回答期限後に自動でフィードバック。

--- アンケート

​ ・各動画の「理解度」、「満足度」について選択肢(三択)から回答するものと、質問・要望・感想を記述する自由回答欄。

 ・回答は任意ですべて匿名。教員は回答者を特定できない。

 ・第14週(最終週の前週)のみ、上記アンケートとは別に、講義全体に関するアンケートを実施し、これのみ回答者には小テストと同じ得点を自動付与(回答率を上げて履修者全体の意識や選好を把握するため。匿名であることは変わらず)。

--- 「復習用に使用する教材

 ・動画の元素材をPDF化したもの。動画を視聴完了しないとダウンロードできないように設定。

--- 「Moodleのアナウンスメント

 ・毎週送信。

 ・簡単な質問や要望に対するリプライ、アップロード完了のお知らせ、その他の重要事項のお知らせなど。

パッケージ全体のコンセプトをまとめると下図のようになります。図中のすべてのコンテンツは、勤務校(早大政経学部)のMoodle(eラーニングプラットフォーム)で配信しました。

2021概要.png

​つまり、履修者は、まず「ガイダンス動画」でその週の概要・目的などを把握して、次に「本編動画」を二度三度見直して小テストに回答し、最後に質問などをアンケートで送信する、という仕組みです。

​アンケートで寄せられた質問・要望・コメントに対しては、内容や緊急度に応じて、「Moodleのアナウンスメント」(毎週送信)、「ガイダンス動画」(ほぼ毎週配信)、「質問・コメント紹介動画」(随時配信)で回答し、履修者全員にシェアしました。

初回動画は非常に大事

上記のような「仕組み」や履修上の注意などについては、昨年度は、アナウンスメントと初回講義のリード文で示しましたが、今年度は、この説明自体を初回の「ガイダンス動画」(履修案内)としました。下掲のサンプル動画⑤です。オンデマンド講義の履修者の多くは、文字の説明文よりも、1本目の動画をとりあえず見て履修の意志を固めるからです。そこで、初回動画は入念かつ印象的に作りこみました。 ※サンプル動画⑤制作時点ではソフトウェア音声のパッケージ(製品)に女性の声しか存在しなかったため3Dアニメも声にあわせて必然的に女子キャラになりましたが、その後、ジェンダー的観点から、サンプル動画①のように、男性の声をボイスチェンジャーで自作したうえで男子キャラの3Dアニメを制作・登場させました。

​サンプル動画⑤「#01: 初回ガイダンス」(履修案内) 10分

​この初回動画に対しては、匿名アンケートで下記のような反響がありました。これらのコメントからも、1本目の動画がその後の履修者のモチベーションを相当に左右することになる、と言えるように思います。講義の仕組み・流れを俯瞰しただけでなく、10分という短い動画の中で、顔出し(肉声)、3Dアニメキャラ(ソフトウェア音声)、図を多用したアニメーションなどの、本講義の特徴を一度ですべて見せたことが効果的だったと思います。 

アンケート回答例:

-- 「ビデオの編集が大変凝っており受講生への配慮を感じるものでした。来週以降もこの講義を履修できることがすごく嬉しいです。」

-- 「高いクオリティのビデオを作成している先生の苦労が目に見えるようで、講義に対するモチベーションが上がりました。」

-- 「ガイダンス動画のオープニングから驚きを隠せませんでした。他学部から履修しているため、なぜ500人もの学生が履修を希望してたのか分からなかったのですが、今回の講義を受けてその理由が分かったような気がしました。」

-- 「一番初めのガイダンスビデオから他のオンライン講義とは一線を画すオープニングのクオリティの高さ、謎のアニメのガイド、と度肝を抜かれながら楽しく受講させていただきました。大学生活最後の学期に、一番印象に残るのはきっと国際政治経済学だろうなと最初から確信しました。これからの講義を楽しみにしています。」

-- 「このような形の授業は初めてで大変新鮮です。積極的に学びたいと考えているので、今後ともビデオを楽しみにしています。」

 

-- 「私たち学生に理解してもらうための努力が凄まじいなと感じました。これからの講義も楽しみにしています。」

 

-- 「オンデマンド講義における学生のモチベーションが考慮されていて非常に好感を持ちました。」

 

-- 「一年前、私がオンライン留学する前の早稲田におけるオンライン講義のほとんどが、聞き取りにくい音声を長時間聞かされるといったように『オンラインの強み』を活かしきれておらず、それどころかオフライン講義の下位交換だとすら感じました。そのことを鑑みると、このような『図表の多用』や『機械音声』の導入は学生にとり斬新で、惹きつけられるような形式であるだけでなく、内容の理解も容易でした。学生生活最後の一年間にこのような講義に出会えて光栄です!」

​制作のポリシー

 

昨年度は、制作に先立って、「履修者は『自粛』の孤独な環境のなか、慣れないオンライン授業を、不安を抱えながら受講している」と想定しました。その想定を前提に、ストレスを減らしモチベーションを高めるような、「心が折れない」動画を制作・配信することを心がけました。具体的には、「長い動画は作らない」「動きのある動画にする」「遊びの要素を入れる」「一人ではないと感じさせる」の4つをポリシーとして制作しました。

​今年度は上記の4つのポリシーから「一人ではないと感じさせる」をはずし、代わりに、「指導教員がいると感じさせる」を制作ポリシーに加えました。

その理由は、「はじめに」で触れたように、「自粛・孤独」等の前提が大きく変わったからです。

 

本講義を開講したのは2021年9月~2022年1月でした。丁度、東京オリンピック後の、コロナ第5波終息からオミクロン株によるコロナ第6波の始まりの期間にあたります。コロナ以降、もっとも「自粛」ムードのない期間でした。サークル、部活、バイト、インターンなどは、ほぼコロナ以前に戻ったように見えました。学生は「一人」ではなくなりました。そして、「ステイホーム」でなくなった学生たちにとって、オンデマンド講義は、課外活動と両立させながら、好きな時に好きな場所で視聴するものになっていました。

​その一方で、オンライン=デフォルトとなって、学生たちの要求水準は高くなったと感じました。「オンデマンド講義の視聴」という行為はYouTubeやサブスク動画と類似の視聴体験であるため、もはや「ストレスを減らす」だけでは不十分だと思いました。「大学の講義」というコンテンツに対するエンゲージメント(紐帯感のようなもの)を向上させる工夫が必要である、と考えました。「大学には居ない、けれども大学らしい講義を受講している感覚は欲しい」、今年度の履修者のニーズをそのように定義してみました。

 

そこで、教員(私)が研究室から個人指導をデリバーしているような動画を制作してみようと発想しました。これが、「指導教員がいると感じさせる」の意図です。

以下では、昨年度の考察(こちら)を織り交ぜながら、4つのポリシーに基づいた実践の紹介とその考察をしたいと思います。

​【付記: 履修者の属性】

幸い、昨年度の本講義は学生授業アンケート等で高い評価を受けました。また、某学生サークルが毎年発行している某情報誌M(学生の口コミ情報を独自集計して各学部の科目をレイティングしている)で最高得点だったそうです。そのため、本年度の講義には約500名の履修希望が殺到し、ランダム抽選で280名(規定上限)が履修登録しました。

 

本講義は学部2年生以上を対象とする科目で、履修登録者の丁度50%(140人)が2年生、47.5%(133人)が3年生、2.5%(7人)が4年生以上でした。「2年生」は、2020年4月に入学し、その年度は丸1年間、オンライン授業しか受講できなかった学年です。

 

例年、本講義の履修者が100~150名程度(昨年度は約130名)であることを考えると、履修希望者・登録者の過半数は「国際政治経済学にあまり興味がない」学生であろうと推測されました。実際、第14週に実施した講義全体を振り返るアンケート(回答率77.1%。以下「総括アンケート」と表記)では、下図の通り、「国際政治経済学に興味があったから履修した」と答えた学生は半数の51%でした。また、「履修を決める際にもっとも参考にした情報源」の44%が某情報誌Mでした(先輩・友人の口コミを合わせると丁度50%で、シラバスの46%を上回ります)。

 

そのため、今年度は特に、「関心の低い」学生のエンゲージメントを向上させることを強く意識しました。

質問1.png
質問2.png

長い動画は作らない(再考)

昨年度の実践とその考察は次の通りでした(一部修正)。

----------(昨年度の考察ここから)----------

 

動画の長さは、1本15~25分程度としました。対面の時には、例えば「覇権安定論」というテーマで、「公共財」、「国際公共財」、「キンドルバーガー」、「クラズナー」、「ギルピン」の説明をまとめてしていたものを、「公共財」なら「公共財」で1本という具合に講義内容を細分化して、小テーマごとに一つの動画にしました。

その上で、

--- 各動画に「小テスト」を設定し、小テーマごとに理解を定着させる。

--- 動画Aを視聴完了しないと動画Bを見れない、という具合に積み立て方式にする。

という形にしました。

​各回の匿名アンケートの回答では、「緊張感を保つのにちょうどいい時間」、「小テストとセットになっているし、時間的にも見返しやすいので、意欲がわく」、「集中しやすい」と好評でした。

動画を短めにしておくことは、制作者にとっても、修正箇所が見つかった時の改変作業が少なくてすむという利点がありました。

なお、講義のパーツがモジュール化されたことにより、あとから、「〇〇を理解するために、動画Xと動画Yを復習してください」という具合に、学習目的に沿ってメニューを組み換えて提示することも容易になりました。

また、積み上げ方式にしたうえで「小テスト」に期限を設定しておくと、あとからまとめて視聴するわけにいかなくなるので、履修者は計画的に(毎週着実に)学習に取り組んでいました(視聴履歴で確認できます)。

これらはオンデマンドならではの効用で、対面よりも学習効果をあげることができたと感じます。

----------(昨年度の考察ここまで)----------

​上記の諸点については今年度も同様の設定をし、得られた効果も同様と感じました。

 

小テストについては、今回、「テスト問題から講義でどこが重視されているのかを理解しやすい」、「自分が重点を置いてメモを取っていたところとテストで問われていることが異なっていることがあり、テストによって改めて動画を見直して自分の理解を補う機会が得られた」というコメントもありました。

​動画の「長さ」については、ゼミ生との会話などから、「緊張感を保てるのは20分まで。30分を越える動画は視聴する気になれない」が、相場だと感じています。実は、昨年度と同じテーマの動画も今年度すべて作り直したのですが、情報量が増えて、全般的に昨年度の動画より長めになってしまいました。そこで、15分を越える動画の場合は、どのタイミングで休憩すればよいか明示しました。具体的には、リード文に

 

『〇〇のビデオは約24分あり、従来より長めのビデオになっています。14分8秒のところで話が一区切りするので、視聴に疲れる場合は、そこでいったん休憩するなどしてください。』

​といった文章を入れました。

「対面授業は90分(我慢して)聞いていたではないか」と言いたくなるところかもしれませんが、対面とオンデマンド動画は、まったく異なる体験価値を持つコンテンツなので、それぞれの特性に応じて最適化した提供の仕方が必要だと感じています。変な例えかもしれませんが、「新聞」と「テレビ」で同じ「ウクライナ情勢」を報じていたとしても、「新聞で読む」のと「テレビで見る」のとでは、全然、体験の特性が違います。新聞は電車の中でも読めますが映像は見れません。テレビはその逆です。テレビを見ている人に、新聞と同じウクライナ情勢なんだから電車の中で見ろ、と言ってもどうにもなりません。

また、「長い動画は飛ばし飛ばし見てしまうが、短い動画なので飛ばさずに視聴でき」というコメントが多くありました。動画のスキップ視聴を設定で禁止するよりも、動画を分割して視聴してもらう方が効果的だと思いました。

そして、教員にとっても、「長い動画を作らなくていい」と思えると、気分がだいぶラクになると実感しました。

​【付記: 動画のスピード調整について】

​長さの問題と関連して、視聴スピードの問題があります。Moodleでは動画の視聴スピードを履修者が遅くしたり速くすることができます。また、教員が、その機能を停止する設定もできます。「教員の話していることはそのまま聞いてほしい」という気持ちは私にもありますが、学習効果のために最適な「話速」は学生ごとに異なるので、私の講義ではスピード調整は自由にしています。

 

ゼミ生との会話などから、視聴スピードを調整できない動画ではストレスが大きくなり、学習のモチベーションが下がると認識しています。受動的になりがちなオンデマンド講義において、「スピードを変えられる」のは履修者ができる数少ないインタラクティブな干渉なので、科目や講義内容の性格上、決まった速度で聞く「べき」コンテンツでない限りは、スピード調整は自由にした方がよいのではないかと感じています。

なお、総括アンケートで、本講義を何倍のスピードで視聴していたかを尋ねたところ、下図のような回答結果でした。Moodleの標準装備は2倍速が上限ですが、選択肢に「2倍より高速」があるのは、プラグインをつけると3倍にすることも可能らしいからです(ゼミ生から聞きました)。

この結果を見ると、「2.0倍」が単独トップですが、この層の多くは「とにかく早く終わらせたい」履修者ではないかと推測しています。一方、「1.4倍」と「1.6倍」を合わせると全体の約4割(「1.2倍」を加えると全体の5割)であり、ここらが能動的履修者の最適スピードではないかと推測しています。つまり、上掲のサンプル動画②・③の音声の1.2~1.6倍が、最大多数の最大幸福を実現するスピードではないかと思われます。「速すぎるのでは」と感じるかもしれませんが、履修者は、実際の履修の過程では、わからなかった箇所では、動画を「止めたり」、「巻き戻してもう一度見たり」、「難しいところはスピードを落としたり」しているので、デフォルトが速すぎて問題になるということはないようです(そのためにもスピード調整は自由にすべきだと思います)。

質問3.png

動きのある動画にする(再考)

昨年度の実践とその考察は次の通りでした(一部修正)。

----------(昨年度の考察ここから)----------

 

せっかく「動画」というメディアコンテンツを利用できるのに、「顔」や「資料(静止画)」や「テキストデータ」を映すだけや、レジュメを朗読するだけではもったいないと考えました。

「顔」や静止画を映すという発想を捨て、動きのある図やグラフに変えるだけで、説明の密度がぐっとあがりました。また、見ていて飽きないものになりました。

言葉(文字)では説明に時間がかかる内容も、動きのある図やグラフを使うと、簡単にしかも言葉よりわかりやすくプレゼンテーションできると実感しました。対面の授業で90分かけて説明していた内容を、そのような動画にしてみたら、ほとんどのものが15分の動画2本程度に収まってしまいました(これは大きなショックでした)。逆に言えば、オンデマンド90分なら、対面以上のクオリティを実現できる、ということだと思います。

匿名アンケートの回答でも、「オンラインならではのコンテンツを提供してくれたのがすごく嬉しかった」、「扱う内容は高度なのに、ビデオがわかりやすく、しっかりと理解を深めることができた」等のコメントを毎回多数もらいました。

フル・アニメーションの制作は、はじめは敷居が高いと感じますが、基本的には、「パワーポイント」と「動画編集ソフト」があれば、意外と簡単に制作できます。イラストなどのオブジェクトはフリー素材をネットから容易に入手できます。パワーポイントだけでも音声入りのアニメーションの制作は一応可能ですが、いったん出力したものをあとから修正・改変(たとえば音声の差し替え、エフェクトの追加など)する可能性があることを考慮すると、映像・音声をミックスする最後の編集工程は動画編集ソフトを使った方がよいと思います。

----------(昨年度の考察ここまで)----------

​上記の諸点についても今年度は昨年度とほぼ同じです。「本編動画」(上掲のサンプル動画②・③)は全編、このポリシーで制作されています。今年度は、実写である「ガイダンス動画」(サンプル動画①)や「質問・コメント紹介動画」(サンプル動画④)で「顔」を映しましたが、顔出し映像の上に、文字、図、写真、エフェクトなどを載せて視覚的に動きのあるプレゼンを心がけました(例えば、文献紹介で書影が現れるなど)。「顔出し」自体が動きのある表現要素の一部、という感覚で制作しました。

​昨年度の考察にある通り、動きのある図やグラフにすると、同じ講義内容でも対面(の録画)よりも短い時間に仕上がります。したがって、上述の「長い動画は作らない」ポリシーにも有効です。

​【付記: 動画のトータルタイムの問題】

動きのある図・グラフを多用すると、必然的に動画の単純な合計時間は90分(対面1コマ)より短くなりますが、まったく差支えないと考えています。サンプル動画②と③は、それぞれ、もともとは90分かけて講義していた内容です。先に「小テーマ毎に分割」と紹介しましたが、この二つの動画は、90分を分割したものではなく、内容を間引くことなく90分から20数分へ「圧縮」したものです。それが2本なら、対面の90分より実質的にはボリュームが増していることになります。実は、動きのある図やグラフにしたことで、対面時代の講義内容ではネタが足りなくなってしまい、今まで講義したことのないテーマを追加せざるを得なくなりました。これは学生にとってメリットだったはずです。

また、履修者は、理解を深めるため、特に小テスト対策のために、動画を繰り返し視聴します。総括アンケートで、本講義を通常、何回視聴したかを尋ねたところ、約6割の履修者が2回以上視聴していました(下図参照)。大半の学生が、動画視聴だけで実際には90分以上を費やしていたと思われます。

質問4.png

【付記: スマホ視聴の問題】

「履修者は机に座ってPCで受講している」と教員は想定しがちですが(確かに昨年度はそれが現実でした)、実際には、移動中(電車の中など)や移動先(ファミレス、バイト先など)でスマホで視聴している履修者が結構います。それがいいとは私も思いませんが(メモなど取らなさそうなので)、現在、学生は1日に「対面」と「オンライン」の両方を受講する状態を強いられており、無駄に長い「対面から対面への空き時間」や「オンラインのための場所探し」に苦慮しています。そのため、スマホ視聴もやむを得ない面もあるかなと感じています。

小さな文字がびっしり詰まったスライドしか映らない映像だと、こうしたスマホ視聴に向かないようです。

​【付記: ソフトウェア音声について】

 

​「本編動画」は、動きのある図・グラフにしただけでなく、既に触れたように、全編が「入力文字読み上げソフトウェアによる音声」になっています。

​昨年度、ソフトウェア音声を導入した動機は、開講前に試しに制作してみた動画の自分の肉声が、

--- 話すスピードが一定でない。

--- 声の大きさが一定でない。

--- 言い間違いが多い(話している時には気づいていない)。

--- 「えー、あー」などの耳障りな口癖が多い。

だったこと、​要するに、大変、聞きづらいものだったことにあります。

ソフトウェア音声を導入したことにより、これらの諸問題は基本的にすべて解決されました。また、籠った「声」を晒すことに抵抗があった自分としては、ソフトウェア音声の導入のおかげで一気に制作上のストレスから解放されたと実感しました。

その他の利点として、昨年度の考察では次のものを挙げました(一部省略)。

----------(昨年度の考察ここから)----------

アンケート結果から、予期していなかったメリットが明らかになりました。Moodleで配信される動画は、視聴スピードを調整して再生することができます(遅くしたり、速くしたり)。しかし、話速や音量が一定でない「肉声」だと、この機能が実際には役に立たないようです。読み上げソフトの音声は話速も音量も一定なので、スピード調整機能との相性が非常にいい、ということでした。

動画を作る側にも利点がありました。最大の利点は、「修正が容易である」ことです。肉声の録音の場合、言い間違いをあとから発見しても、その部分をパッチ処理するのは相当に骨が折れます。パッチ処理しても、その箇所だけ声の調子が違うなど、不自然な仕上がりになります。

これに対し、読み上げソフトで作成した音声ファイルの修正は、修正したい単語を新たに読み上げた短いファイルを作成し、音声編集ソフトで該当箇所をそのファイルに差し替えるだけです。話速や声の調子はまったく同じなので、修正後の違和感もまったくありません。こう表現するとわかりにくいですが、要するにカット&ペーストです。

間違いの修正だけではなく、将来、動画の内容をバージョンアップさせたい時にも(例えば新たな説明を加えるなど)、同じ要領で簡単に加工できます。

----------(昨年度の考察ここまで)----------

※ 本講義で使用した読み上げソフトは、「CeVIO AI」です。このソフトは、「教育機関自身の利用ではなく教諭個人が自身の授業で利用される範囲であれば」個人ライセンスで(つまり法人ライセンス不要で)使用することができます。もちろん個人でYouTube等へのアップロードもOKです(ライセンス条件をこちらで確認できます。メーカーにも直接確認しました。CeVIO Creative Studioと名前が似ていますが別の製品です)。私が知る限り、個人ライセンスで授業での利用が可能な数少ないソフトです。なお、同ソフトには男性の声がありません。サンプル動画①に登場する男子キャラの声は、このソフトで作った女性の声をボイスチェンジャーで男性の声に変換しています。

遊びの要素を入れる(再考)

このポリシー自体は昨年度と同じですが、今年度は、その意味あいが変わりました。

昨年度は、孤独と不安の中で一日中オンライン講義を受講している学生像を前提に、「自室にこもって、深夜ラジオ番組を毎週こっそり聞く愉しみのような感じ」のQ&A動画を本編とは別に6回配信しました(フル・アニメーション+ソフトウェア音声で制作)。この動画の中で、余談的なエピソードを披露したり、自作の「音楽」に自作の「詩の朗読」(学生の心情をソフトウェア音声が詠んだもの)を乗せた作品を「オンエア」したりしました。この試みは、「オンライン授業ばっかりの中で、砂漠の中のオアシス」と、大変好評でした。

​今年度も当初同じスタイルのQ&A動画を配信しましたが、「孤独・不安」の前提が大きく崩れたため、役割は終えたと判断し一回で打ち切りました。

昨年度の途中から自覚したことですが、今は、「遊びの要素を入れる」ことは、むしろ動画制作を続ける教員のメンタル維持に非常に重要、と感じています。動画の制作は、対面講義の準備の何倍もの手間・時間・根気が必要となるので、動画を作ること自体が「楽しい」と思えないと、心が折れてしまうからです。オンラインになって鬱になった教員も多いと聞きます。

​何が楽しいかは教員によって千差万別なので一概には言えませんが、私自身は、①趣味(音楽など)を活かす、②面白そうなテクノロジーがあったら使ってみる、の2点を基本としました。各動画のOPやEDのテーマ音楽を自作したり、ガイダンス動画で楽器(リコーダーなど)を演奏したのが①です。3Dアニメキャラは②の例です。3Dアニメキャラは、「ソフトウェア音声に『実体』があったほうが履修者はリアリティを感じるだろう」という思惑から投入しましたが、そもそもは単純に「面白そうだから使ってみようかな」と思ったのがきっかけです。思い返せば、ソフトウェア音声、フル・アニメーションなども、そうだったと思います。山登りが好きならば、毎回、山の上の景観を背景に本人出演動画を収録する、みたいなのもアリだと思います(思いつきです)。

本人が楽しんで制作した動画は履修者も楽しんでくれるので、結果的に、履修者に対する「遊びの要素」になって、動画視聴のモチベーションがあがるようです。総括アンケートでは、「先生が楽しんでらっしゃる気がしました。ノリノリな感じが伝わってきて意欲が湧きました」、「他の先生方がやっていない試みばかりで、毎週どんな講義になるか楽しみに受講しておりました」といったコメントが多数寄せられました。

 

リコーダーで「月の砂漠」を吹いた回(音階における「文化的多様性」の説明をした動画)は特に反響が大きく、「先生のリコーダーがとても上手でびっくりしました。いつも、楽しい動画を作ってくださりありがとうございます!今期の授業の中で1番楽しみな講義です!」、「毎週毎週、更新されるのをとても楽しみにしています!!! いつも友達に先生の授業のことを話していて、今日はリコーダーを吹いていると伝えると大笑いしていました」といったコメントが大量に届きました。

総括アンケートでは、「リコーダーや雑談などから先生の素顔というか個性が見えて、親しみやすさを感じました」といったコメントも多かったことから、「遊びの要素を入れる」ことは下記の「指導教員がいると感じさせる」の制作ポリシーと相乗効果を生んでいたように思います。

【付記: 「面白くしていいのか」問題】

「遊び」の要素は、それ自体は「無くてもよい」ものです。講義のなかみそのものとは関係がありません。また、「遊び」の要素を、「けしからん」、「邪道だ」、「大学の講義の質を下げている」と感じる教員もおそらく多数いるだろうと思います。

この点についての私自身の考えは、次の通りです。すなわち、「対面時代の講義で伝えようとしていた内容について妥協していないなら(つまり、すべて盛っているなら)、動画の表現は面白ければ面白いほどよい」、と考えています。なぜなら、「内容が同じ」なら、表現として退屈な講義より面白い講義の方が、確実に学生のモチベーションは上がるからです。

指導教員がいると感じさせる

昨年度は、その週の講義の狙い、前週までの動画との関連などについて、リード文に記載していました。今年度は、これを「ガイダンス動画」で説明することにして、「本編動画」の前に置きました。また、「本編動画」がフル・アニメーション+ソフトウェア音声であるのに対し、「ガイダンス動画」は教員本人(私)の「顔出し」または3Dアニメキャラ(またはその両方)で進行するスタイルにしました。「顔出し」は今年度が初めてです。

 

当初は、動画内の割合を顔出し3割、3Dアニメキャラ7割くらいのつもりでしたが、「顔出し」への好意的反応が多かったのと、3Dアニメキャラの制作に手間がかかることから、次第に割合が逆転し、後半はほとんど顔出しだけになりました。なお、「質問・コメント紹介動画」もほぼ同じ手法です。

 

「ガイダンス」をあえて「顔出し」にした意図は、上の「制作のポリシー」で述べたように、「好きな時に好きな場所」で視聴している履修者に、「指導教員がいる」感覚を持ってもらうことで、講義へのエンゲージメントを向上させることにありました。

 

そのため、非人格的でelaborateな「本編動画」とは対照的に、「ガイダンス動画」はパーソナルなアプローチで制作しました。具体的には、

-- カメラ目線で語り続ける。

-- 原稿無し、リハーサル無し、撮り直し無し、で撮影する。

-- 余談や「遊びの要素」を入れる。

という手法をとりました。研究室で教員が学生に語りながら本編をその場で上映している、というイメージです。

 

「カメラ目線」は他のオンデマンド講義で普通に行われていることだろうと思っていたのですが、意外にも、アンケートに、「カメラを見て説明してくださって新鮮でした」、「オンデマンド授業が多い現在、担当教員の顔を知らないまま授業を受けることは多くあります」といった回答がありました。ゼミ生に確認すると、オンデマンド講義の多くは「スライドに合わせて声を録音する形式」で、教員が登場する場合も「うつむいて原稿を読んでいる」ことが多いとのことでした。

対面授業は対面と言っても、大人数の講義科目の場合、実際には「1」(教員)対「多」(履修者)でしかなく、履修者が教員と目を合わすことはほとんどありません。しかし、カメラ目線で語りかけてくる動画なら、一人一人の履修者が常に教員と目を合わすことになります。ある意味、対面以上に対面らしくなります。疑似体験と言えばそれまでですが、心理的効果は大きいと感じました。

​「原稿無し、リハーサル無し、撮り直し無し」で撮影すると、当然、「言い間違い」や「失敗」が発生します。あえて、これはそのまま残しました。そして、サンプル動画①の「11:19」や同④の「0:20」の箇所のように、実写映像の上に吹き出しを載せて情報を訂正するなどしました。こうすることによって、やや単調になりがちな顔出し映像に「動き」やアクセントをつけることもできました。

「ガイダンス/顔出し」について、総括アンケートで任意のコメントを求めたところ、112件の回答が返ってきました。回答内容には驚くほど共通した傾向があり、概ね次の3つに分類できました。(1)は狙い通りですが、(2)と(3)、特に(3)は想定していなかった反響でした。

(1)「実際に教授に教えてもらっている実感が湧いた、大学の講義を受けているという実感があった」とする回答。

回答事例:

-- 「先生が顔出しをして、話してくださることで、実際に講義を生で受けている気持ちになれたので、ガイダンスだけでも登場していただけてうれしかったです。」

-- 「フルアニメーションは聞きやすかったが、やはりガイダンスで教授の顔を拝見し、実際に授業に参加しているかのようにガイダンスを視聴できたことは良かったです。」

-- 「授業を受けているという雰囲気を味わえるので、ガイダンスで教授が出演するのを楽しみにしていた節もありました。」

-- 「先生が時々出て来て、授業の内容を話してくれることで、誰から教わっているのかを実感できるので、大学の授業、アカデミズムという感じがして良かった。」

(2)「(教員に対して)安心感、親近感、信頼感を得られた」とする回答。

回答事例:

-- 「先生本人がご登場してくださると親近感がわきますし、『この先生があのすごい動画を作ってくださっているのか…』と思ってしっかり見ないと!!と思うことができました。」

-- 「オンデマンド授業では、どんな先生が授業をしてくださっているのか実感がわかないことが多いので、先生本人が登場する機会があることで先生の存在をより身近に感じられたと思います。」

-- 「先生の顔もわからないまま授業を終えるということがなくなり、その後にノートや教科書を振り返ってみたときに、この授業はこの先生のこういう内容の授業だったなと強く記憶に残ると思います。」

-- 「先生が姿を見せて直接お話しくださったので、学生側としては教員に対する認識や信頼感というものが生じたように思います。」

(3)「ガイダンスと本編でメリハリがついた」とする回答。

回答事例:

-- 「私はガイダンス動画において遠矢先生ご自身が登場されて授業の導入を行うというスタイルが非常に好きでした。難しいテーマの回もありましたが、ガイダンス動画での先生の口頭による紹介があったことで、本編の内容もとっつきやすくなったように思います。」

-- 「教員本人が登場する機会があることで、メリハリを持って講義を受けられたと感じました。内容に入る前に概要を説明してくださったことで、その後の講義がわかりやすくなったと思います。」

-- 「遠矢先生のように少しでも顔出しの映像がある事や演奏する姿を見ると人柄が伝わり、授業を引き続き受講しようという意欲に少なからず繋がっていたと思います。またガイダンス動画は比較的気を張らずとも聞き流せる内容が多かったと思いますが、オンデマンド授業で1講義の講義動画を何本かに分ける際に、1本目の動画のとっかかりやすさは受講の意欲を保つ上で非常に重要であると考えています。そのためこの授業では聞き流しながら『今週は大体こんな感じの内容をやるんだ』という軽い気持ちで見ることのできるガイダンス動画が常に1本目に設定されていたことは重要な要素だったように感じます。少なくとも今このアンケートを真剣に答えようとしているのは、先生の顔や人柄を感じたからだと思います。」

 

-- 「教授の出演する動画があった方が『大学の講義を受けている』という実感があり、良いと感じます。一方で読み上げは音声が聞き取りやすくメリットも大きいと感じたので併用していくことが望ましいのではと感じました。」

 

-- 「内容が素晴らしくても話し方の癖や声質で理解しづらい経験を今まで複数回経験しているので、遠矢先生のように授業内容はより癖の少ない手法で提供し、ガイダンスで交流するというやり方がとてもありがたかったです。」

 

-- 「アニメーションだけだと面白く集中しやすい反面人間味を感じられないような気がします。逆に先生がしゃべっているだけでは他の講義と変わらず、少し冗長に感じてしまうことがあるかもしれません。したがって、先生とアニメーションの2方面から講義を展開するのが良いと思いました。」

 

-- 「先生がお話しされているときはリラックスモードになれて、アニメーションのときは講義を聴く体制に切り替えるのが習慣になったので、メリハリをつけるという意味でとても良かったです。」

 

-- 「ガイダンスで遠矢先生ご本人を拝見することで、講義を集中して聴こうという気持ちになりメリハリを持って受講できました。また、楽器の演奏などユニークな回もあり、毎回楽しみに見ていました。確かに、人が肉声で話すのをずっと聞くのは大変なので、個人的にはこれくらいの長さ・頻度でちょうど良いと感じました。」

 

上記(3)のコメントから、講義の「ガイダンス」と「本編」を分けて提示し、前者と後者の制作アプローチにドラスティックな違いをつけたこと(「ガイダンス」はリアリティ重視、「本編」は理解しやすさ優先)が、履修者のモチベーション、エンゲージメントを向上させた、と言えるように思います。

学生からの評価

各週のアンケートでは、毎回、「本編動画」の「理解度」(理解しやすかった、どちらとも言えない、理解しにくかった、の3択)、「満足度」(興味を持てた、どちらとも言えない、興味を持てなかった、の3択)を確認する質問を実施しました。全動画の平均は、「理解度」について「理解しやすかった」94.45%(昨年度90.8%)、「どちらとも言えない」3.25%(昨年度7.0%)、「理解しにくかった」2.29%(昨年度2.2%)で、「満足度」について「興味を持てた」94.54%(昨年度90.3%)、「どちらとも言えない」4.20%(昨年度9.2%)、「興味を持てなかった」1.25%(昨年度0.5%)でした。

同様に、毎回の「ガイダンス動画」について尋ねたところ(役にたった、どちらとも言えない、役にたたなかった、の3択)、平均は「役にたった」95.0%、「どちらとも言えない」4.53%、「役にたたなかった」0.46%でした。

 

​総括アンケートでは、任意に本講義全体を振り返る感想(クレーム、改善提案[黄色の文字]を含む)を求めたところ、99件のコメントが返ってきました。上掲の考察から漏れたものを、いくつか紹介します。

-- 「理論を説明する際に、概念の部分と具体例の部分が区別され、かつ両方しっかり教えてもらえていたのでとても理解しやすかった。世界史や地理の知識などいままでの知識を統合的に使える内容で自分の今までの学びがさらに深まっていると実感しやすい授業だった。」

 

-- 「一つ改善してほしいところがあるとすれば、どうしても個人で完結してしまう感じが強かったので、グループワークのようなものがあると一層に楽しかったのではないかと思います。」

 

-- 「今後の人生で国際政治経済学と聞くたびに、遠矢先生の顔を思い出すような気がします。」

-- 「学部のオンライン講義の中でも、最もクオリティが高くありつつも有意義な学びがある講義であったと感じています。テーマの進行や相互の繋がりがしっかり明示されたことで、各回のノートを参照しながら違いを考えるという学びのスタイルを経験することができました。」

-- 「私は2020年入学の2年生なのですが、1年の時ほかのオンデマンド講義を受講して来年もこんな感じが続くのか…と思っていた矢先、遠矢先生のこの授業に出会ってとても感銘を受けました。」

-- 「1番真面目に受けた授業です。」

-- 「3Dアニメキャラは不要に思います。特に、出先での受講が憚られます。」

-- 「動画時間、構成、アニメーション、小テストなどがすべて良く考えられていて感動さえしました。」

-- 「大学に入って一番ビックリした授業でした。新たな授業形態として模範的ではないかと個人的に思います。また、zoomを用いてリアルタイムで授業を行うよりも、こちらの方が手が込んでいて非常に良いと思いました。オンデマンドという特性を最大限生かした大変よい講義だと思います。」

-- 「今まで受けたオンデマンドの講義の中で、最も意欲的に取り組むことができたと思います。工夫がたくさんあって、私自身も気合いを入れて講義を受けようという気持ちになれました。」

-- 「音声に関しては、ソフトウェアによる音声よりも遠矢先生のお声のほうが良いと感じました。というのも、ソフトウェアによる音声は文中の抑揚がないように感じられ、文章を理解しづらくなる場面がありました。抑揚は、文中の要素のどの部分が大切かを伝える大事な要素だと考えるので、先生本人の音声による授業を推奨します。

-- 「最初はあまり前向きな理由で受講したわけではなかったが、終わってみると内容も面白く有意義な授業であったと思う。すべてのオンデマンド講義がこのテンポ感であったらなとさえ思う。」

最後に

 

昨年度の考察でも触れたことですが、オンデマンド講義の動画を制作していると、「大学らしさとは何なのか?」という疑問が常に頭のどこかに浮かんできます。メディア・コンテンツとしての完成度を追求すると、確かに学習に効果的な「作品」にはなっていきますが、それは、私自身が慣れ親しんできた「大学の講義」の姿とはだいぶ異なるものです。

今年度は「ガイダンス/顔出し」の動画を挿入することで、いくらかオールド・スタイルに回帰しましたが、むしろYouTuberに近づいてしまったとも言えるかもしれません。

このアプローチを続けると、「顔出し」したところで、オンデマンドの講義動画は、やがて「大学」以外の他のメディア・コンテンツと同質化し、区別できなくなってしまうのではないかという懸念があります。工夫を凝らせば凝らすほど、オーバーシュート(過剰性能)に陥って、コモディティ化してしまうかもしれません。

そして、デマンド・プル(学生のニーズ)とテクノロジー・プッシュ(ICTツール)だけでオンデマンド講義をデザインしてしまうと、「わかりやすい」けれど「考えない」講義に収斂してしまう危険性があるように感じます。矛盾するような言い方ですが、「わかりにくい」ことを動画で「わかりやすく」してしまった後は、今度は「簡単にはわからない」要素(小テストや課題で?)を増やして、今まで以上に、より「考えさせる」工夫をしなければならないと感じています。1年後の私の課題です。

 

(了)

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